給料ファクタリングとは?

給料ファクタリングとは?

通常のファクタリングは事業者が売掛債権を売って資金調達します。
給料ファクタリングは会社員が次回以降の給料を売って資金調達できるサービスですが、違法性があるので注意してください。
ファクタリングと給料ファクタリングの違いや摘発事例が多い問題点を紹介します。

給料ファクタリングは違法

給料ファクタリングは違法

結論から申しますと給料ファクタリングを提供するサービスのほぼ全てが違法です。
以前は給料ファクタリングを提供するサービスが多数あり、ネット検索などで簡単に業者を見つけられました。
令和5年2月20日の最高裁判決で「給料ファクタリング」と称する取引は、顧客からの返済を予定した貸付であると判示が出されています。

簡単にまとめると銀行や貸金業者が法定利息の範囲内で給料ファクタリングを提供するのは現在も合法です。
ただし、貸付をできる業者などが給料ファクタリングの名称でサービスを提供するメリットはありません。
現在はSNSで給料ファクタリングの名称を使って集客する事例が散見されますが、ほぼ全てが違法な闇金業者です。

ファクタリングの仕組み

現金と電卓

ファクタリングは2010年代から急速に普及した歴史があり、当初は違法な資金提供サービスではないかと議論されました。
複数の裁判が行われ、売掛債権の譲渡はノンリコースなら合法で、貸金業者以外がリコースファクタリングを提供するのは違法といった裁判所の見解が示されています。

ノンリコースとは償還請求権なしのことで、売掛先が万が一倒産や経営悪化などで未払いを起こした場合は利用者側に弁済義務がありません。
債権を買取したファクタリング業者が債権の差押え手続きをして、それでも回収できなかったら損失を被るルールです。
債権の未払いリスクを回避できる付加価値によってローン・融資などの貸付には該当しないと判断され、利息制限法を超える手数料が法的に認められています。

ファクタリングは貸付と差別化をしないといけない理由から、銀行以外が提供するファクタリングサービスの全てがノンリコース(償還請求権なし)です。
給料ファクタリングの場合は貸付との差別化ができていないことや、給与債権と売掛債権の異なる特性から事実上の違法認定をされています。

給与債権の特性

バツ印を出す女性

一般的に会社員の給料は月末などの締め日があり、翌月25日払いなど決まった日に給料が振り込まれます。
月末締めだった場合は月末まで勤務した時点で翌月の給料が確定します。
仮に月末締めで1ヶ月しっかり働き、翌月になってから無断欠勤や通告なしで突然の退職をしても前月に働いた分の給料は丸々支払う必要があるルールです。
精勤手当や皆勤手当なども、既に確定している給料分から差し引かれるのではなく、欠勤などをした翌月の給料で減額しないといけません。

つまり、給料は締め日まで通常通り勤務すれば翌月の給料日での支払いが保証されるべき債権であり、それを買取するのはファクタリングだというのが業者側の言い分でした。
最高裁の見解では、給与の直接支払いの原則によって給与債権の譲渡というスキームが原理的に成り立たないと指摘しています。
利用者が給料を必ず職場から受け取り、そこから事前に買取してもらった給与債権を利用者が返済するのは貸付に限りなく近いサービスです。

通常のファクタリングは2社間ファクタリングであっても、売掛先に債権譲渡した旨を伝えてファクタリング会社に直接払ってもらうなどの依頼をすることができます。
給与所得者は職場に債権譲渡通知がいくと継続勤務が困難になり、自ら債権を買い戻さざるを得ない状況を裁判所が指摘していました。
ここからは当サイト独自の見解で裁判所の判決文には記載されていませんが、給与債権は売掛債権に比べて未払いのリスクが少なく、未払いが起こっても労働基準法などで労働者が他の債権より優先的に弁済を受けられるルールです。
未払いリスクの違いによってノンリコースの付加価値が少ないことが、貸付に比べて割高な手数料のファクタリングが認められない要因の一つになったのではないでしょうか?

届出をしている貸金業者が法定金利の利息手数料分と同等以下で給料ファクタリングを提供する分には合法であり、中小企業など倒産リスクがある勤務先の給与債権を利息手数料から少額の手数料を上乗せしてノンリコースで提供する程度なら、合法だと認められるかもしれません。
実際のところ、給料ファクタリングの手数料は年利換算で200%を大きく超える金額が相場でした。
最高裁が給与債権の譲渡は売掛債権の譲渡とは異なる見解を示したことで、現在は立派なホームページなどをもって大々的に集客するファクタリング業者が絶滅しています。
SNSなどで給料ファクタリングを謳っている業者が存在しますが、それは闇金など違法な貸付サービスなので絶対に利用しないでください。